LYAHFGG:
どうやら、
*
に1
という組み合わせと、++
に[]
という組み合わせは、共通の性質を持っているようですね。
- 関数は引数を2つ取る。
- 2つの引数および返り値の型はすべて等しい。
- 2引数関数を施して相手を変えないような特殊な値が存在する。
これを Scala で確かめてみる:
scala> 4 * 1
res16: Int = 4
scala> 1 * 9
res17: Int = 9
scala> List(1, 2, 3) ++ Nil
res18: List[Int] = List(1, 2, 3)
scala> Nil ++ List(0.5, 2.5)
res19: List[Double] = List(0.5, 2.5)
あってるみたいだ。
LYAHFGG:
例えば、
(3 * 4) * 5
も3 * (4 * 5)
も、答は60
です。++
についてもこの性質は成り立ちます。 … この性質を結合的 (associativity) と呼びます。演算*
と++
は結合的であると言います。結合的でない演算の例は-
です。
これも確かめよう:
scala> (3 * 2) * (8 * 5) assert_=== 3 * (2 * (8 * 5))
scala> List("la") ++ (List("di") ++ List("da")) assert_=== (List("la") ++ List("di")) ++ List("da")
エラーがないから等価ということだ。これを monoid と言うらしい。
LYAHFGG:
モノイドは、結合的な二項演算子(2引数関数)と、その演算に関する単位元からなる構造です。
Scalaz の Monoid
の型クラスのコントラクトを見てみよう:
trait Monoid[A] extends Semigroup[A] { self =>
////
/** The identity element for `append`. */
def zero: A
...
}
Monoid
は Semigroup
を継承するみたいなのでその型クラスも見てみる。
trait Semigroup[A] { self =>
def append(a1: A, a2: => A): A
...
}
これが演算子だ:
trait SemigroupOps[A] extends Ops[A] {
final def |+|(other: => A): A = A.append(self, other)
final def mappend(other: => A): A = A.append(self, other)
final def ⊹(other: => A): A = A.append(self, other)
}
mappend
演算子とシンボルを使ったエイリアス |+|
と ⊹
を導入する。
LYAHFGG:
次は
mappend
です。これは、お察しのとおり、モノイド固有の二項演算です。mappend
は同じ型の引数を2つ取り、その型の別の値を返します。
すごい Haskell は名前が mappend
だからといって、*
の場合のように必ずしも何かを追加 (append) してるわけじゃないと注意している。これを使ってみよう:
scala> List(1, 2, 3) mappend List(4, 5, 6)
res23: List[Int] = List(1, 2, 3, 4, 5, 6)
scala> "one" mappend "two"
res25: String = onetwo
|+|
を使うのが Scalaz では一般的みたいだ:
scala> List(1, 2, 3) |+| List(4, 5, 6)
res26: List[Int] = List(1, 2, 3, 4, 5, 6)
scala> "one" |+| "two"
res27: String = onetwo
より簡潔にみえる。
trait Monoid[A] extends Semigroup[A] { self =>
////
/** The identity element for `append`. */
def zero: A
...
}
LYAHFGG:
mempty
は、そのモノイドの単位元を表わします。
これは Scalaz では zero
と呼ばれている。
scala> Monoid[List[Int]].zero
res15: List[Int] = List()
scala> Monoid[String].zero
res16: String = ""
LYAHFGG:
さて、数をモノイドにする2つの方法は、どちらも素晴らしく優劣つけがたいように思えます。一体どちらを選べまよいのでしょう?実は、1つだけ選ぶ必要はないのです。
これが Scalaz 7.1 での Tagged type の出番だ。最初から定義済みのタグは Tags にある。8つのタグが Monoid 用で、1つ Zip
という名前のタグが Applicative
用にある。(もしかしてこれが昨日見つけられなかった Zip List?)
scala> Tags.Multiplication(10) |+| Monoid[Int @@ Tags.Multiplication].zero
res21: scalaz.@@[Int,scalaz.Tags.Multiplication] = 10
よし! |+|
を使って数字を掛けることができた。加算には普通の Int
を使う。
scala> 10 |+| Monoid[Int].zero
res22: Int = 10
LYAHFGG:
モノイドにする方法が2通りあって、どちらも捨てがたいような型は、
Num a
以外にもあります。Bool
です。1つ目の方法は||
をモノイド演算とし、False
を単位元とする方法です。 …Bool
をMonoid
のインスタンスにするもう1つの方法は、Any
のいわば真逆です。&&
をモノイド演算とし、True
を単位元とする方法です。
Scalaz 7 でこれらはそれぞれ Boolean @@ Tags.Disjunction
、Boolean @@ Tags.Conjunction
と呼ばれている。
scala> Tags.Disjunction(true) |+| Tags.Disjunction(false)
res28: scalaz.@@[Boolean,scalaz.Tags.Disjunction] = true
scala> Monoid[Boolean @@ Tags.Disjunction].zero |+| Tags.Disjunction(true)
res29: scalaz.@@[Boolean,scalaz.Tags.Disjunction] = true
scala> Monoid[Boolean @@ Tags.Disjunction].zero |+| Monoid[Boolean @@ Tags.Disjunction].zero
res30: scalaz.@@[Boolean,scalaz.Tags.Disjunction] = false
scala> Monoid[Boolean @@ Tags.Conjunction].zero |+| Tags.Conjunction(true)
res31: scalaz.@@[Boolean,scalaz.Tags.Conjunction] = true
scala> Monoid[Boolean @@ Tags.Conjunction].zero |+| Tags.Conjunction(false)
res32: scalaz.@@[Boolean,scalaz.Tags.Conjunction] = false
LYAHFGG:
Ordering
の場合、モノイドを見抜くのはちょっと難しいです。しかしOrdering
のMonoid
インスタンスは、分かってみれば今までのモノイドと同じくごく自然な定義で、しかも便利なんです。
ちょっと変わっているが、確かめてみよう。
scala> Ordering.LT |+| Ordering.GT
<console>:14: error: value |+| is not a member of object scalaz.Ordering.LT
Ordering.LT |+| Ordering.GT
^
scala> (Ordering.LT: Ordering) |+| (Ordering.GT: Ordering)
res42: scalaz.Ordering = LT
scala> (Ordering.GT: Ordering) |+| (Ordering.LT: Ordering)
res43: scalaz.Ordering = GT
scala> Monoid[Ordering].zero |+| (Ordering.LT: Ordering)
res44: scalaz.Ordering = LT
scala> Monoid[Ordering].zero |+| (Ordering.GT: Ordering)
res45: scalaz.Ordering = GT
LYAHFGG:
では、このモノイドはどういうときに便利なのでしょう?例えば、2つの文字列を引数に取り、その長さを比較して
Ordering
を返す関数を書きたいとしましょう。だたし、2つの文字列の長さが等しいときは、直ちにEQ
を返すのではなくて、2つの文字列の辞書順比較することとします。
Ordering.EQ
以外の場合は左辺の比較が保存されるため、これを使って2つのレベルの比較を合成することができる。Scalaz を使って lengthCompare
を実装してみよう:
scala> def lengthCompare(lhs: String, rhs: String): Ordering =
(lhs.length ?|? rhs.length) |+| (lhs ?|? rhs)
lengthCompare: (lhs: String, rhs: String)scalaz.Ordering
scala> lengthCompare("zen", "ants")
res46: scalaz.Ordering = LT
scala> lengthCompare("zen", "ant")
res47: scalaz.Ordering = GT
合ってる。“zen” は “ants” より短いため LT
が返ってきた。
他にも Monoid
があるけど、今日はこれでおしまいにしよう。また後でここから続ける。