まずは集合の積を考える。集合 A と B があるとき、A と B のデカルト積は順序対 (ordered pairs) の集合となる
A × B = {(a, b)| a ∈ A, b ∈ B}

2つの座標射影 (coordinate projection) があって
coordinate projections

これは以下の条件を満たす:

この積という考えは case class やタプルの基底 trait である scala.Product にも関連する。

任意の要素 c ∈ A × B に対して、c = (fst ∘ c, snd ∘ c) ということができる。

昨日と同じトリックを使って、明示的に単集合を導入する:

product of sets

この(外部)図式は上の条件を捕捉している。ここで 1-要素を一般化すると圏論的定義が得られる。

定義 2.15. 任意の圏 C において、対象 A と B の積の図式は対象 P と射 p1 と p2 から構成され
product diagram
以下の UMP を満たす:

この形となる任意の図式があるとき
product definition
次の図式
product of objects
が可換となる (つまり、x1 = p1 u かつ x2 = p2 u が成立する) 一意の射 u: X => P が存在する。

この定義は普遍であるため、任意の圏に適用することができる。

積の一意性 

普遍性は AB の積の全てが同型を除いて一意であることも示唆する。

命題 2.17 積は同型を除いて一意である。

PQ が対象 AB の積であるとする。

uniqueness of products

  1. P は積であるため、p1 = q1 ∘ i かつ p2 = q2 ∘ i を満たす一意の i: P => Q が存在する。
  2. Q は積であるため、q1 = p1 ∘ j かつ q2 = p2 ∘ j を満たす一意の j: Q => P が存在する。
  3. ij を合成することで 1P = j ∘ i が得られる。
  4. 同様にして 1Q = i ∘ j
  5. i は同型射、P ≅ Q である。∎

全ての積は同型であるため、一つを取って A × B と表記する。また、射 u: X => A × B⟨x1, x2 と表記する。

 

Sets 圏ではデカルト積が積となることは紹介した。

P が poset だとして、要素 p, q ∈ P の積を考える。以下のような射影が必要なる

  • p × q ≤ p
  • p × q ≤ q

 そして任意の要素 x で x ≤ p かつ x ≤ q であるものに対しては

  • x ≤ p × q

を満たす必要がある。

この場合 p × q は最大下限 (greatest lower bound) となる。