カンファレンスでのユニバーサル・アクセスへ向けて

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2日間の #ScalaMatsuri は盛況に終わった。だけど、来年へ向けて色々課題もあるので、それを自分なりに書き出してみる。題の通り、僕達の次の目標とするべきものはユニバーサル・アクセスだと考えている。Scala 言語においては、統一アクセスの原則 (universal access principle) と言えば、メソッドとフィールドの両方が外側から見ると別けへだて無くアクセスできることを指す。

この文脈でのユニバーサル・アクセスは、様々なグループの人にとっても包括的 (inclusive) なカンファレンスという意味で使っている。具体的には:

  • 女性/男性/ヘテロ/LGBT のプログラマ
  • 日本語/英語話者
  • 初心者と上級者
  • ポスドクなどの研究者
  • 日本以外のアジア諸国からの人

など。

テクノロジー界における女性問題、及びその他のジェンダー問題

去年は女性によるセッション数はゼロ。今年は、マクロに関してのセッションが一つと、FuRyu さんのスポンサー LT が一本あった。これは良い傾向だと思うけど、僕としては、女性の人による Scala コミュニティ一般への参加、勉強会などへの出席、そして ScalaMatsuri のようなカンファレンスへの出席をもっと応援したいと思う。男性側としてできることの一つに、もし勉強会に参加してくれた女性の方がいたら、変な挙動を取らずに普通のハッカーの一人として接することがあると思う。

Scala Days、NE Scala、そして PNW Scala に倣って、今年の ScalaMatsuri では Geek Feminism Wiki/Ada Initiative を原案とする行動規範を採用した。この行動規範は、全員にハラスメント・フリーの経験を提供することを約束し、特に「全てのコミュニケーションは、技術的な発表の場にふさわしいものであるべき」ことを求める。今後、正式なハラスメント報告方法の確立などを含む、ポリシーの実装をはっきりさせる必要があるが、公的にこのようなガイドラインを採用できたことで、より inclusive なカンファレンスになっていくと考えている。

言語の壁

Scala がよく使われているその他の欧米諸国に比べて、日本の英語スキルは特にリスニングとスピーキングで遅れている。ScalaMatsuri の運営側としては、カンファレンスをより尖ったものにして、Scala コミュニティからより多くの英語話者を惹きつけることを目標の一つとしている。それに沿って、招待講演者の旅費を出したり、テキスト翻訳を提供したり、一般的に英語話者が来ても楽しめるように歓迎するようにしている。今年は、日本語話者でも英語で発表する人も出てきた。

このような努力は、Scala には興味があるが英語は苦手という多くのカンファレンス参加者にとって利害関係の衝突となる。リアルタイムで提供される有志によるテキスト翻訳は、無いよりはいいかもしれないけど、往々にして不十分である。解決方法として検討するべきはプロの通訳を雇うことだ。これは YAPC::Asia などではうまくいったらしい。さらに、2つの別路線 (track) を作って、それぞれ英語での発表と日本語での発表を行うべきだ。

初心者と上級者

Matsuri は祭という意味で、テーマも "enjoy Scala" だった。前から Scala をやってきてるユーザには確かに楽しいカンファレンスだったかもしれないが、僕のものも含め多くのトークは初心者を置いてきぼりにしたものとなった。この回避方法となり得るかもしれないのが、英語路線と日本語路線の区別の他に、NE Scala のようにセッションを参加者の投票で決めてもらうことだ。(通訳付きで)英語のセッションでも聞いてみたい人と上級者、逆に日本語にして欲しい人と初心者に相関性があると仮定すると、それぞれの路線が、投票によって聴衆が聞きたい適切なレベルに補正されるのではないだろうか。

ポスドクとアジア諸国からの参加者

1日目のレポートに書いたとおり、宋 剛秀さんの発表は唯一学術的な方面からのものだったけど、独自で面白いものだった。アメリカやヨーロッパからのロックスター的な登壇者を観るのも面白いけども、日本から宋さんのようなポスドクの研究者や、はたまた近隣のアジア諸国である、インド、中国、韓国、台湾、シンガポールなどから呼んでみるのも面白いのではないだろうか。英語路線を設けることで、日本語の心配はいらなくなると思う。実装する方法の一つとしては、CFP をもっと比較的長く取って、例えば最大 $1500 までで旅費のサポートをすると宣伝すればいいと思う。投票後には、旅費予算から差し引いていって、票の多い順に可能な限りの人を招待すればいい。

全ての受け皿としてのアンカンファレンス

もし英語路線か日本語路線のどちらかの競争率が高くなっても、今後はアンカンファレンスを受け皿として機能させることができる。今回で多くの人が直接アンカンファレンスが行われる様子を見たので、今後はより多くの議論や準備済みのトークが増えることを期待していう。来年からはホワイトボードを廃止して、当日の朝に Google docs に直接全てのアンカンファレンスのアイディアをファシリテータ名と共に書く方向に変えていくべきだと思う。狙いはあまり人気が無いセッションでも部屋が空いていれば、ちゃんとセッションを設けることにある。

まとめ

技術系カンファレンスの取りまとめは、革新的な何かをやることと、参加者が楽しめることを両立させるためのバランス感覚を必要とする。皆で知恵を出しあって、ScalaMatsuri をよりユニバーサル・アクセスという方向に持っていけたらいいと願っている。